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ベジタブルバスケット
私はアタかごに魅せられて30年以上になります。
仕事として600種類以上のアタかごと出会いました。どれもこれも魅力的ですが、特にこの“ベジタブルバスケット”は、心底心惹かれます。
この形
幾何学的でなく、栽培が出来ない天然つる植物のアタの形状をそのまま活かした曲線で編み上げています。つまり丸い物を編む場合、完璧な楕円でもなく丸でもない、それに近いありのままの素材の形状を優先して編み上げているのです。
縦28cmx横36cmx奥18cmとHPではご紹介しておりますが、天然植物“アタ”を使い、職人の手編みということで寸法は品物に依って誤差が生じます。
“ベジタブルバスケット”の表面の模様
上部にぐるりと連なっている黒は“アタ”の根の部分を使って模様にしています。染めているのではありません。
沢山取れない根を使う製品はそれ自体に価値があり、価格も高くなります。
下部に連なっている菱形の模様はソンケットと呼ばれている模様です。
インドネシアの幾何学模様は伝統的なジャワ更紗に使われている模様を取り入れている場合が多いようです。
ソンケットの模様は菱形のような形を組み合わせて広がっています。
インドネシアの長い歴史の中で培われたろうけつ染めの模様が、現在でもいろいろな分野で息づいている事に感動します。

(ソンケット柄)
職人
バリ島などの取引先に職人の数を訊くと何千人という返事が返ってきます。
どこで訊いても千人単位の職人の数が返ってきますので3000人近くの職人が存在しているのだろうと想像しています。
時々、お客様から「この間ね、アタかごの工場へ行ってきたのよ!」とお話をいただきます。
しかしながら、職人達は家内工業で仕事をしています。
胴元 (合意した価格で仕事依頼発注。この時胴元は材料のアタと形、寸法、を書いた指示書を持って行く)➡Aファミリー地区(仕事を受ける)➡出来上がると、Aファミリー地区の仕事をしたそれぞれが胴元の元へ編み上がったかごを袋に入れて持って行く➡胴元は、ノートに職人それぞれの“名前”と“編み代”を書き入れ、代金を渡す。
代金は上手下手に拘わらず皆同じだと聞いています。
ここで職人達の地区を“ファミリー地区”と記しましたが、インドネシア(大都会を除く)は基本村落共同体で暮らしています。#この村落共同体に関しましては、後日お話させていただきます。
そんな中で、この“ベジタブルバスケット”や豆かご(弊社取り扱い)を編んでいるD氏は特別です。
この絶妙なかごを編める職人はいないようです。沢山発注しても出来上がってくるのは僅か。更に、この人が亡くなったら、もう出来ないと言われています。
試しに、胴元M氏に”豆かご“と”ベジタブルバスケット“を発注してみました。答えはNO! なるほどと思いました。